話すこと、そして話を聴いてもらうことを躊躇(ためら)っていませんか?
まだ小さかったあの頃、あなたは…。
ちょっとだけ、まだあなたが子供だったころを思い出してみてください。
子供のころあなたは、親に自分の本当の気持ちを真正面から、そして無条件に受け止めてもらいたくて、ことばを探しながらも一生懸命に話をしようとしていたはずです。もちろん、思い通りに伝えられなくて理解してもらえないことの方が多かった。
その時は、小さなあなたの内面から、まっすぐな感情があふれ出してきて大声で泣きわめきましたよね。悔しかった。つらかった。寂しかった。どうすることもできなくて、ただただ嗚咽(おえつ)をあげて涙を流すしかなかった。
でも、自分の胸の内を明かすこと、気持ちを理解してもらうことに、何の恥じらいもためらいもありませんでしたよね。だから、心理状態としてはとっても健康的だったはずです。あのころは…。
では、今のあなたはどうですか?
人から「会話」を奪うと、ただの動物?
いつしか人類は、話をすることで自分の気持ちや考えを他人に伝え、会話によって人と人とがコミュニケートできるようになりました。そして、その円滑な意思伝達手段が大きなカギとなって文明が栄え、技術が進歩し、生活が便利に、より豊かになった。
少なくともこの日本という国に生まれた私たちにはよく理解できるはずです。
でも、ちょっと変じゃないですか?生活をより豊かにするために人類が英知を振り絞って作り出した便利グッズの数々。これって、利便性を追求するあまり私たちから「会話」を奪っていませんか?ラジオ・テレビ・DVD・パソコン・メール・インターネット・ペット系家庭用ロボット・音声ガイダンス・あいさつをする券売機・自販機・自動改札…などなど
休みの日、一人暮らしだったら誰とも一言も会話を交わすことなく過ごすことだって容易です。昔だったら考えられないことですよね。
はたして、このまま生活に「自動」という言葉が繁殖し続けると、「会話」という、とっても尊い人間の行為はどこへ行ってしまうのでしょう?
会話が減ると自殺者数が増える?
昔の人は、貧乏でも、食べるものがなくても、学校に行けなくても、戦争があっても、自殺する人は少なかったのです。ところが今は、裕福でも、好きなものが食べられても、学校に行けても、戦争がなくても、自殺する人が多い。これはなぜでしょうか
ザックリとした私の考えはこうです。
昔は貧乏でも、食べるものがなくても、学校に行けなくても、戦争があっても、「会話」はたくさんあった。「会話」を通じて自分を理解してもらうことができたし、他人を理解することができた。そして、その理解によって、「自分は他人の役に立っている」「他人は自分を見てくれている」という、小さな幸せを実感することができた。だから自殺者は少なかった。
でも今はその逆。まったく不自由のない暮らしをしていても「会話」は確実に激減している。だから自殺者は激増している…。
これは警察庁の統計ですが、平成8年の全国の自殺者数は23,104名、平成9年は24,391名、そして、平成10年ではなんと32,863名。平成8年から平成9年では1,287名増なのに対し、平成9年から平成10年では8,472名も増えているのです。これはインターネットやメールが全国に普及し始めた時期と同時期です。しかも平成10年から平成20年までの10年間、毎年30,000人を大きく上回る数が自殺者数として記録されています。
人は2つの感情を同時に持てない。
人は2つの感情を同時に持てません。人間には大きく分けて「喜・怒・哀・楽」という4つの感情があるといわれていますよね。「喜び」「怒り」「哀(かな)しみ」「楽しみ」の4つです。たとえば、大喜びしながら怒りの感情は持てません。怒っている時に哀しみの感情は湧いてきません。どれをとっても同じ。一つの感情が過ぎ去ったあとに、次の感情を持つことしかできないのです。
ちょっと昔、タレントの竹中直人さんが「笑いながら怒る人」っていう芸をやっていましたけど、あんなことはありえないからこそ、不自然であり奇抜であり面白い芸だと認められたんですよね。
ということは、気持ちが「少し晴れた」「少しラクになった」「少しスッとした」「少し落ち着いた」「少し元気になった」という前向きの感情を持てたとき、イライラしたり、悩んだり、苦しんだりという逆の感情は持てないわけです。
では、気持ちが「少し晴れる」「少しラクになる」「少しスッとする」「少し落ち着く」「少し元気になる」という感情を持つにはどうしたらいいのでしょうか?
それは、多くの場合「人に話を聴いてもらう」ことで自然とわきあがってくる感情です。
ここのところ、しばらくその感情を持っていない人でも、過去には絶対経験をしているはずです。そのときのことを思い出してみてください。話し相手が自分の話にしっかり耳を傾けてくれて、ちょっと心が軽くなったときのことを。
自分を肯定する。少しずつ。
「自己肯定感」という言葉があります。簡単に言えばこれは、どんな自分であっても、そのありのままの自分を否定せず受け止めるという感情です。
なぜここで「自己肯定感」の話をするかというと、自分の話を真剣に聴いてくれる話し相手を見つけるには、自己を(ある程度)肯定する必要があるからなんです。
アーティスト、スポーツ選手、政治家、先生、会社の社長、誰をとってみてもわかりますが、自分自身に否定的な人で人気のある人っていませんよね。イチロー選手が「ボクはダメな人間です…」なんて言っていたらおかしいでしょ。イチロー選手は、「ボクはこれだけ練習しているんだから、この結果が出せてあたりまえです!」って、はっきり自己を肯定して、自信を持ち続けているから人気があるんですよね。また、そういう人物には人がついてくるし、ついてきた人は話を聞きたがる。
イチロー選手の場合は例が極端ですが、でも他人に話を聴いてもらえる人には、かならずこの「自己肯定感」があります。
わたし(『ききびと』)は、ちょっと特殊な人間なので、自己を全否定している人の話をいくらでも聴けるし聴きたいと思うタイプなんですが、そういう変わった人は滅多にいません。多くの人は、自分を否定してる人の話を聴こうとしません。
だから、まずは少しずつでいいから自分を肯定してみる。
そして、自分を少しずつ肯定するには、先ほどの、気持ちが「少し晴れる」「少しラクになる」「少しスッとする」「少し落ち着く」「少し元気になる」という感情を1回でも多く持つことが大事なのです
「はなすこと」と「きくこと」。
「話をする」という意味での「はなす」を漢字で書くと「話す」ですよね。あたりまえです。これ1つしかありません。
では、「きく」を漢字で書くとどうでしょう?「聞く」「訊く」「聴く」、漢字では3種類の「きく」があります。もちろんこれには、それぞれ大きな意味の違いがあるから漢字が違うんです。
まず、「聞く」の意味。これは音や声が、自分の意志とはあまり関係なく自然と耳に入ってくる感じの意味です。英語だと「hear」ですね。基本的には受動的な要素が含まれています。
次に「訊く」。この漢字を書くことは比較的少ないと思いますが、簡単に言えば「尋ねる」と同じ意味だと考えてください。「すみません、ちょっとお尋ねしたいのですが…」っていう感じ
最後に「聴く」。これは英語で言うと「listen」。つまり、心を落ち着かせて注意して耳を傾けるという意味です。「傾聴」なんていう言葉もあるように、この「聴く」という漢字は非常に能動的な意味を持っています。
「はなす」という言葉は漢字が1つしかないのに、「きく」には漢字が3つもあるんです。ちょっと不思議な気もしますよね。でもこれはそんなに難しく考えなくても納得できます。
こういうことなんです。
「はなしをする人」の気持ちはどんな場面でもほとんど一緒。自分の話をきいてほしいという感情のみですよね。ところが、人の話をきく側の気持ちはいろいろあるということなんです。注意して「聴こう」とする人もいれば、ただなんとなく「聞こえている」人もいれば、お尋ねで「訊いている」人もいる。
だから「はなす」の漢字は1つなのに、「きく」の漢字は3つもあるんですね。
必要なのは「聴いてくれる」話し相手ではないですか?
人は話をいくら長い時間「聞いて」もらっても全然心は晴れません。気持ちはラクになりません。聞き流されているだけですから。そうではなく、自分の話にしっかりと耳を傾けてくれて、気持ちを理解し、共感し、自分の存在と考えを認めてくれる、そんな「聴いてくれる」話し相手に話さなければ何も変わりません。
もう一度、子供のころを思い出してください。
あなたの本当の気持ちは、「自分の話を聴いてほしい!」だったはずです。その「話したい気持ち」こそが、子供のころからず〜と大事に、今でも持ち続けているあなたの素直な感情です。話したい内容は変わっても、「話したい気持ち」はきちんと持ち続けていますよね。
素直な感情に重いフタをしていませんか?もし、そのフタを開けたいとお考えであれば、『ききびと.com』がそのお手伝いをします。そして、必ず2人でその重いフタを開けられるはずです。
そして、最後に…。
ここまで、私の話を(目と心で)聴いてくれて本当にありがとうございます。今度はあなたの話を私が(耳と心で)聴く番です。私、『ききびと』は、あなたの話がどんな内容であっても、しっかりとお聴きします。
あとは、『ききびと』にメールを送るか送らないか、あなたの直感で判断してください。その直感は100%の確率であなたの味方になってくれる大事な感覚です。
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